民事(家族)信託を考えてみよう! 2

今回は、最近話題になっている民事(家族)信託と、任意後見制度を比較してみます。
①まず、契約の時期ですが、双方とも、判断力のある健常なうちに、財産管理等を依頼する人(今後、「本人」とします。)と後見人又は受託者が契約することになります。
②次に、契約の効果発動の時期ですが、任意後見制度の場合、本人に認知症等が発症し、判断能力がなくなった後になります。これに対して、民事(家族)信託は、契約後は、信託目的に沿った財産管理・処分が始まります。ただ、任意後見契約でも、契約締結後から認知症発症までの、ご自分で銀行へ行ったり、不動産取引等の契約を締結するのに不自由な場合もあるので、財産管理委任契約をつけることも可能です。

③次に、身上監護についてですが、身上監護とは本人が適切に生活できるように、介護保険や病院などの「身の上」の手続きをすることです。これについて、任意成年後見制度では、当然、契約中に身上監護義務が含まれています。これに対して、民事(家族)信託では、財産面を重視した制度であるため、身上監護は含まれておりません。

④また、本人がなくなった後の相続についてですが、成年後見制度では、通常の相続の場面に移行します。すなわち、遺言等がなければ、法定相続の規定に従って相続が進みます。これに対して、民事(家族)信託の場合、信託財産は信託法の規律に従って管理されているので、本人が亡くなった後、次の受益者が指定されていれば、その方が財産管理・処分の利益を得ることになります。しかし、これには民法の遺留分減殺請求があった場合の処理は、判例が出ていないの不明な状況にあります。

このように見てくると、両制度とも一長一短がありますね。ただ、民事(家族)信託の場合、後見だけでなく、障がい者や再婚、事業承継の場面でも活用が期待されていることも申し添えておきます。

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民事(家族)信託を考えてみよう! 1

最近、テレビでよく取り上げられる民事(家族)信託であるが、簡単に言うと、信託法という民法とは別の財産管理の手法である。以前は、信託というと信託銀行等の商事信託が主流であったが、平成19年の法改正以来、個人間の信託が使いやすくなってきたので、注目を浴びている。

簡単に仕組みを説明すると、財産を有する者(父親)が委託する人となり、財産の管理や処分を行う者(子供)が受託する人となり、信託契約を締結し、その信託財産の管理や処分から得られた利益を受益者(父親)に帰することになるというものだ。

また、この受益者については、当初の受益者(父親)が死亡した場合に、二次受益者(母親)というように、遺言よりも先まで指定でき使い勝手で優っているといえる。

例えば、信託する財産が不動産の場合、形式上は、委託者から受託者に所有権が移転したような登記がなされるが、実質的な所有者は変わっていないため、元の委託者に所得税は課税されることになる。

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