建設現場における外国人労働者受入に関する特例について

現在、日本の建設業界は、①近年の建設投資の減少により、建設企業が倒産するなど、技能労働者の離職が進んだこと、②技能労働者の高齢化が進み、高齢者が仕事を辞めていっていること、③建設産業の処遇改善が進んでいないことなどから、若者が入職を避けるようになっていること から極端な担い手不足に陥っています。

これに、拍車をかけているのが、東日本大震災の復興事業と、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会の関連施設整備等による一時的な建設需要の増大にため多くの技能労働者が必要されています。

この労働力不足を補うため、建設業界における外国人建設就労者受入制度が整備され、2020年までは技能実習終了後も、在留資格「特定活動」にて就労が認められているところです。この外国人建設就労者の要件は、①建設分野技能実習に概ね2年間従事したことがあること、②技能実習期間中に素行が善良であったこと となっています。このため、建設業界における外国人労働者は急激に増加し、平成23年 1.3万人弱から平成28年4.1万人となっております。

そして、これらを定めた外国人建設就労者受入事業に関する告示は、平成29年11月1日に改正され、さらに外国人技能実習生制度の改正(第3号技能実習の創設及びこれに伴い最長5年間実習可能)に合わせて、2020年度末までに就労を開始した外国人建設就労者は最長で2022年度末まで建設特定活動に従事できることとなった。

また、第2号技能実習修了後特定活動を開始するまでの間に1カ月以上の帰国期間を(平成30年度までは例外あり)、第3号技能実習修了後特定活動を開始するまでの間に1年間の帰国期間を設けなければならなくなった。

以上、建設業界の労働者不足は、ますます少子高齢化が進む現在、深刻な問題となっているが、外国人建設就労者は今後とも制度の拡充が予想される、有望な制度ではないだろうか。

外国人建設就労者に関するご相談は、マエヒロ法務事務所にご相談ください。

 

在留資格「介護」について

前回の技能実習生としての「介護」とは別に、平成29年9月から在留資格として「介護」が追加された。違いは何かというと、今回の在留資格「介護」は就労資格である。介護施設等に雇用され、職務に従事し、報酬を得ることが可能である。
これに対して、技能実習は、特定の技能・技術・知識を習得・習熟・熟達するための在留資格であり、それに必要な期間(最大5年間)だけ雇用契約に従って従事するだけである。

それでは、創設された在留資格の内容をみると、「本邦の公私の機関との契約に基づいて介護福祉士の資格を有する者が介護又は介護の指導を行う業務に従事する活動」とあり、ここから①日本国内の公的団体又は私企業との雇用契約により業務に従事すること、②介護福祉士の資格を有すること、③「介護」又は、「介護の指導」を行う業務に従事することが、要件であることがわかる。

これについて定められた上陸基準省令をみると、①介護福祉士の資格を有していること ②日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること と定められている。

国内で社会福祉士を取得するルートとして、留学生として2年以上介護福祉養成施設(大学、専門学校等)を卒業し、介護福祉士試験に合格し、在留資格を変更して介護施設に勤務するルートが一般的である。

さらに、インドネシア、フィリピン、ベトナム等とのEPA(経済連携協定)に基づく受入れもあり、これは、介護施設や病院等3年以上就労・研修し介護福祉士を取得する就労コースと、介護福祉士養成施設を2年以上就学し介護福祉士を取得する就学コースがある。

※詳細は、国際厚生事業団の各EPA条約を確認してください。

在留資格「介護」の取得等のご相談は、マエヒロ法務事務所までご相談下さい。

 

 

介護の技能実習生受け入れについて 

今回は、2020年以降40万人以上不足するといわれる介護労働者が不足するともいわれるが、平成29年11月に技能実習制度の対象職種として新たに追加された「介護」の要件を端的に整理する。

1 コミュニケーション能力  介護職種で技能実習を行うには、技能実習指導員や介護施設利用者とのコミュニケーション力が重要である。1年目は、N3程度が望ましいが、N4が程度が要件であり、2年目はN3が要件とされている。(N3:日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる。N4:基本的な日本語をり理解することができる)。

2 実習実施者の対象範囲  介護の業務が現に行われている事業所(訪問系サービスは除く)、経営が一定程度安定している事業所として設立後3年を経過している事業所

3適切な実習体制の確保 受入れ人数は、事業所単位で、常勤介護職員総数に応じて設定、指導員を実習生5名につき1名選任、そのうち1名以上は介護福祉士等

4監理団体による監理徹底 監理団体の役職員に5年以上の実務経験を有する介護福祉士等を配置 優良要件は、介護職種における実績を基に判断

5移転対象となる業務内容 一定のコミュニケーション能力の習得、人間の尊厳や介護実践の考え方、社会のしくみ・心と体のしくみ等の理解に裏付けられた以下の業 ①必須業務 入浴、食事、排せつ等の解除等、②関連業務 身体介護以外の実践(掃除、洗濯、調理等)、間接業務(記録、申し送り等)③周辺業務その他(お知らせ等の掲示物の管理)

6適切な評価システムの構築 1年目 指示の下であれば、決められた手順に従って、基本的な介護を実践できるレベル、2年目 自ら、介護業務の基盤となる能力や考え方等に基づき、利用者の心身の状況に応じた介護を一定程度実践できるレベル 3年目 自ら、介護業務の基盤となる能力や考え方等に基づき、利用者の心身の状況に応じた介護を実践できるレベル

介護職種については、入国後研修において、日本語科目について240時間以上(N3取得者は80時間以上)、介護導入講習については、42時間以上の講義を行う必要があるが、入国前研修において、各科目について所定時間数の2分の1以上の講義を行った場合は、入国後講習において2分の1を上限として各科目の時間数を短縮できます。

また、今回、ご紹介したのは、介護業務の固有要件であり、技能実習制度本体の要件も、当然ながら満たしている必要があります。

以上です。次回は、在留資格「介護」の説明をします。

介護の技能実習生の受け入れ相談については、マエヒロ法務事務所にご相談ください。

今、話題の民泊について(簡単まとめ4)

民泊をマンションで実施しようとする場合、住宅宿泊事業者が届出時に添付書類として、民泊を認める管理規約の写し、又はマンション管理組合に民泊を禁止する意思がないことを確認した書類(理事会や総会において方針を決議することが必要)が省令で定められました。
以下に、マンション標準管理規約の例をあげます。

〇民泊を実施可能とする場合

第12条区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。
2 区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用することができる。

〇民泊を実施不可とする場合

第12条区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。
2 区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用してはならない。

民泊に関連するマンション管理規約の改正は、マエヒロ法務事務所にご相談ください。

今、話題の民泊について(簡単まとめ3)

住宅宿泊事業法では、民泊の提供者(オーナー)を「住宅宿泊事業者」と呼び、オーナーが宿泊施設に不在の場合、施設の管理を委託する「住宅宿泊管業者」、アプリ等で民泊施設の情報を提供しユーザーとの仲介を図る「在宅宿泊仲介業者」を定め、それぞれの役割・責任等を明確化しました。詳細は、以下の一覧表とおりです。

住宅宿泊事業者 ①都道府県知事への届け出が必要(監督実施)
②年間提供日数は、180日以内
③衛生確保措置、騒音防止措置、苦情対応、宿泊者名簿等義務付け
※保健所設置市、特別区が監督、条例制定可
住宅宿泊管理業者 ①国土交通大臣の登録が必要(監督実施)
②上記③の措置を代行義務付け
※家主不在型の場合、管理業者へ委託義務付け
住宅宿泊管理業者 ①観光庁長官の登録が必要(監督実施)
②内容説明義務等適正遂行のための措置を義務付け
公布 平成29年6月16日 施行期日 平成30年6月15日

民泊についてのご相談は、マエヒロ法務事務所にご連絡ください。

 

今、話題の民泊について(簡単まとめ)2

旅館業法の旅館業を規制している。旅館業とは、「施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業」である。種別として、ホテル営業、旅館営業、簡易宿所営業の3つであり。これまで民泊は、簡易宿所営業に該当するとしていたが、今回の新法で、さらに緩和されたわけである。
旅館業法の改正法は、H30.6.15から施行されるが、大きな改正点は、①ホテル営業と旅館営業の種別がホテル・旅館営業へ統合された ②違法民泊への規制強化(都道府県の報告徴取・立入検査権の付与、罰金上限額を3万円から100万円に引き上げ)③旅館業の欠格要件に暴力団排除規定を追加である。暴力団の手に落ちたような旅館もあるようなので、目立たないが重要な改正点であろう。

項目 規制内容 対応
客室最低数 ホテル10室以上、旅館5室以上 撤廃 政令等改正済み
寝具の種類 洋室:様式の寝具 撤廃 政令等改正済み
寝台の広さ・高さ・置き方等 撤廃 通知撤廃済み
客室の境の種類 洋室 壁つくり 撤廃 政令等改正済み
和室 壁・板戸・襖等の区画 撤廃 通知撤廃済み
採光・照明設備 採光部分の面積が1/8以上 等 撤廃 通知撤廃済み
便所 ホテル:水洗式で座便式 撤廃 政令等改正済み
収容定員・便器種類毎数値規制 撤廃 通知撤廃済み
客室最低床面積 洋室:9㎡以上 和室:7㎡以上 撤廃 政令等改正済み
入浴設備 ホテル:洋式浴室・シャワー室 撤廃 政令等改正済み
浴槽・洗い場面積等の数値規制 撤廃 通知撤廃済み
玄関帳場の基準 受付台の長さ 1.8メートル以上 撤廃 通知撤廃済み
ICT活用による代替方策 撤廃 政令等改正済み

 

今、話題の民泊について(簡単まとめ) 1

何故、今、民泊が注目され、旅館法の改正や、民泊特区の設立、そして民泊新法(住宅宿泊事業法)の制定がされているのか。
ひとつは、ここ数年の訪日外国人旅行者が増大し2017年度は2869万人に達していることがある。そのうち民泊を利用した外国人観光客は12.4%いることがわかった。そこで、厚生労働省が行った追跡調査では民泊の3割は旅館法上の無許可営業、5割は物件を特定できないという背筋が寒くなるような実態であった。
そこで、2020年の東京オリンピックで、更に宿泊施設がひっ迫し、違法民泊が蔓延する前に、法的な対応を図ろうとしているのである。
そして、もうひとつの事情が、日本全国に増加し続ける空き家問題に対する有効な利活用策になることである。次に、旅館業法が大幅に改正されているので、簡単にご紹介する。

民泊のご相談は、民泊専門家 マエヒロ法務事務所まで、ご連絡ください。

 

 

マンションの管理組合って何?

ご自身で購入されるマンションの場合、各居住者の部屋以外の部分は、誰が管理しているのか知ってますか?マンションの管理人さんですか、それとも購入した時にあいさつした自分管理会社の方でしょうか。

実は、本当の管理者は、分譲マンションを購入し所有(賃借人は除きます。)している人全員なのです。でも、忙しいのにそんな約束した覚えがないと言う人もいるでしょう。

このことは、法律で決まっているのです。建物の区分所有に関する法律という法律になりますが、分譲マンションのような建物を「区分所有建物」と法律では呼んでいますが、この所有者は、自分の部屋(専有部分といいます。)以外の建物共用部分(廊下やホールなど)、敷地、附属施設(物置等)の管理を行うための団体を構成することが定められています。

この団体を「管理組合」といいますガ、分譲マンションを購入すると区分所有権が発生し、その時点で法律上当然に管理組合は成立し、所有者全員が管理組合の構成員になるのです。だから、加入した覚えがなくても構成員になり、脱退することもできません。

そして、この「管理組合」や組合員の役員で構成する「理事会」の詳細は、法律や、各マンションにある「管理規約」に定めがあり、これらに基づき、管理組合の運営がなされています。

だから、管理会社とか、管理人さんは、本来、管理組合ですべきマンションの維持管理業務の一部を委託され、実施しているにすぎず、すべての権限と責任は「管理組合」、マンション所有者全員にあるのです。

 

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民事(家族)信託を考えてみよう! 2

今回は、最近話題になっている民事(家族)信託と、任意後見制度を比較してみます。
①まず、契約の時期ですが、双方とも、判断力のある健常なうちに、財産管理等を依頼する人(今後、「本人」とします。)と後見人又は受託者が契約することになります。
②次に、契約の効果発動の時期ですが、任意後見制度の場合、本人に認知症等が発症し、判断能力がなくなった後になります。これに対して、民事(家族)信託は、契約後は、信託目的に沿った財産管理・処分が始まります。ただ、任意後見契約でも、契約締結後から認知症発症までの、ご自分で銀行へ行ったり、不動産取引等の契約を締結するのに不自由な場合もあるので、財産管理委任契約をつけることも可能です。

③次に、身上監護についてですが、身上監護とは本人が適切に生活できるように、介護保険や病院などの「身の上」の手続きをすることです。これについて、任意成年後見制度では、当然、契約中に身上監護義務が含まれています。これに対して、民事(家族)信託では、財産面を重視した制度であるため、身上監護は含まれておりません。

④また、本人がなくなった後の相続についてですが、成年後見制度では、通常の相続の場面に移行します。すなわち、遺言等がなければ、法定相続の規定に従って相続が進みます。これに対して、民事(家族)信託の場合、信託財産は信託法の規律に従って管理されているので、本人が亡くなった後、次の受益者が指定されていれば、その方が財産管理・処分の利益を得ることになります。しかし、これには民法の遺留分減殺請求があった場合の処理は、判例が出ていないの不明な状況にあります。

このように見てくると、両制度とも一長一短がありますね。ただ、民事(家族)信託の場合、後見だけでなく、障がい者や再婚、事業承継の場面でも活用が期待されていることも申し添えておきます。

信託契約、任意成年後見契約は、マエヒロ法務事務所にご相談ください。